事業の概要
コロナ禍において外出が困難である現状を踏まえ、市内にある農家民宿経営者と協同で、オンラインによる農家民宿体験や、モニター宿泊の提供により、多くの人に綾部市内の農家民宿の魅力を伝えるとともに、農泊や食体験を味わっていただくことができます。オンライン宿泊では、綾部市の農家民宿ならではの味噌づくり体験など、画面を通じて説明し、料理の食材を事前に有料で体験者に送り、同時に調理を体験しながら地元の食材を味わっていただくなど、農家民宿の魅力を直に体験していただいています。モニター宿泊では、通常より安価で実際に宿泊いただき、都会では味わえない体験をSNSを通じて発信していただいています。また、地元特産品のPR動画の作成やイベントの開催、さらに「あやべ温泉」利用券を市民等に配布するなど、本市の観光資源の魅力を市民が再認識する機会の提供及び情報発信を行っています。
事業の背景
綾部市では移住者による農家民宿が増えており、共同調理や体験メニューを提供しながら特色ある経営をされています。そうした環境を活かしながら、新たな体験型観光コンテンツの一つとして農泊の推進にも取り組んでいます。コロナ禍において、マイクロツーリズムが普及しつつある中、綾部市の魅力を発信することにより、市民や近隣の旅行者にも身近な観光の魅力を伝えることを目的として当事業に取り組んでいます。
首長インタビュー
臨時交付金をどの事業に充てるか優先順位の考え方
まず、新型コロナウイルス感染症が発生してから緊急対策会議を6回開きました。商工会議所や金融機関、福祉施設などはもちろん、若い世代を代表する方々にも参加していただき、さまざまな市民の声や悩みに耳を傾け、必要な施策を打ち上げました。
なかでも、優先的に進めたのが、市民サービスの継続と飲食店・事業所・農林業者への経済支援です。市役所が閉鎖した場合に備え、その他施設に業務場所を確保し、危機管理体制の構築を図るため、庁内LAN、税・住基ネットワークシステムの構築をしました。経済支援については、国や京都府の支援条件に該当しない方に対し、市独自の経済支援を実施しました。
コロナ対策については、常に“守りと攻めの両輪を回す”ことを念頭に置き、事業計画を進めています。
注目事業を実施することにした背景や目的
綾部市は、グンゼの創業地として知られ、ものづくりのまちとして発展を遂げてきましたが、一方で豊かな自然が残り、里山の風景が美しく、歴史や文化に彩られたまちです。
また、京阪神から車で約1時間という好立地にあること、観光客のニーズが観る観光から体験する観光にシフトしてきたことなどから、里山の暮らしを体験できる農家民宿が注目を集めています。市内には23軒(現在は21軒が稼働)の農家民宿があり、国内外からの観光客を多く受け入れ、移住・定住促進の一端も担ってくれる重要なコンテンツです。
昨年から新しい生活様式が求められ、移動制限がかかるいま、経済支援とコロナ収束後の観光誘客や移住定住を絶やさぬため、農家民宿という綾部の強みを守り育てていく必要があると思い、本事業を実施しました。
注目事業でこだわったポイントや期待している点
農家民宿のオーナーとも意見交換をし、オンラインを活用した農家民宿体験事業というアイデアが生まれました。農家民宿の醍醐味は、オーナー家族と宿泊客とのふれあいです。そこでオーナー側が一方的に情報を配信するだけではなく、双方向で交流を楽しめ綾部のファンになってもらうために、オンライン事業にこだわりました。画面を通じてのオンライン味噌づくり体験や、観光スポットへ案内するオンラインツアーなどオーナーの数だけ特色のある魅力的な体験メニューが生まれました。
また、体験者には体験内容や感想を積極的にSNSで配信いただき、実感のこもったリアルなPRへと結びついているのではないかと期待しています。やはり、体験者の「いいね」に勝る説得力はありません。
移住定住促進のパイオニアとして思うこと
綾部市は、いち早く過疎化対策としての条例を掲げ、移住・定住促進事業を進めてきました。移住定住者を受け入れることは、その方の人生を受け入れること。家や仕事や暮らしなどすべての相談に乗り、対応することはまさに総合格闘技をするようなもの。そのため、定住交流部という専門部署を作り、職員がワンストップで相談に乗っています。
その結果、Uターンはもちろん、Iターンも増え、「移住定住するなら綾部」というPR効果も生んでいます。ここ数年の移住定住者の傾向をみても、新しい価値観をもって新しいライフスタイルを選ぶ方が増え、自己実現のために綾部を選んでくれる方が増えたと分析しています。
withコロナ時代の地域づくり
近き者説(よろこ)べば、遠き者来(きた)る。これは中国の思想家・孔子の言葉で、私がよく引用する言葉です。近き者=市民が自信をもっていいといえるまちをつくらねば、観光客や移住・定住者は来てくれません。そこで私は「医(医療)・職(仕事)・住(住まい)・教育・情報発信」をキーワードにした5つの政策に取り組んできました。
withコロナの時代になっても、まずは市民が住んでよかったと思えるまち、次に移住定住者が住みたくなるまち、そして両者が住み続けられる持続可能なまちづくりを目指しています。コロナに直面し、ますます都市生活者の田園回帰の潮流は高まりを見せるでしょう。地域住民と移住・定住者がWin-Winの関係になれるような事業やまちづくりを進めていきたいと思います。
出典: 地方創生図鑑
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