全薬工業は2021年3月16日、次亜塩素酸水溶液研究の専門家である『三重大学福粼智司教授』を招いて、「次亜塩素酸水溶液及び次亜塩素酸ナトリウムに関するメディアセミナー」を開催した。当日は福粼教授より、次亜塩素酸水溶液及び次亜塩素酸ナトリウムの安全性や効果的な除菌方法、他の除菌成分との比較などの講演があった。また最新データに基づいた新型コロナウイルスへの有効性についての話もあった。
■優れた殺菌効果を持つ「次亜塩素酸ナトリウム」
全薬工業は、昨年6月より一部ドラッグストアにて、「次亜塩素酸ナトリウム」を主成分とする、除菌剤ブランド「PsGUARD(ピーズガード)」の販売を開始すると共に、家庭での『正しい除菌行動の啓発』を目的にした情報サイト「除菌ラボ」を開設。正しい除菌行動のために必要な情報の発信を行ってきた。
その中で、「次亜塩素酸ナトリウム」を主成分とする除菌剤を販売するメーカーとして、「次亜塩素酸ナトリウム」の正しい情報を、広く一般生活者に伝えたいという考えから、メディアへ向けたセミナーを開催することになった。
福崎教授は「次亜塩素酸ナトリウムを用いた正しい除菌のすすめ」と題し、除菌に関する基本的な考え方を解説した後、優れた殺菌効果を持つ次亜塩素酸ナトリウムの特徴について語った。
福崎教授
「除菌とは、一言で申し上げますと、微生物やウイルスの数を現象させることです。具体的には、『洗浄で除去して菌体数を減少させる』『殺菌で死滅させて生菌数を減少させる』ことです。」
実は洗浄して殺菌させる順番は意味がある。洗浄して汚れのない表面のほうがはるかに殺菌しやすいことが経験的にわかっているからだ。
微生物やウイルスは目で見ることができないので、ミクロレベルでの洗浄度が必要になる。
次亜塩素酸ナトリウムは『洗浄力』と『殺菌力』の両方により、優れた殺菌効果を持つ。他の殺菌剤にはない特長だ。
次亜塩素酸ナトリウムは海水から作られる。イオン交換膜電解収縮法により濃い食塩水を作り、電気分解を行うことで『塩素ガス』『水酸化ナトリウム』を生成する。この塩素ガスを水酸化ナトリウム溶液の中に冷却溶解することで、次亜塩素酸ナトリウムが作られる。強アルカリ性溶液であるため、家庭で使用する際は水で希釈する。使用後は水と食塩に分解され、河川を通じて海水になり巡回する。
■洗浄力と殺菌力があり、家庭での実用性が大きい
次に、次亜塩素酸ナトリウムと消毒アルコールとの違いを解説した。
消毒アルコールは浸透性が高いため皮膚の内部まで浸透し、表面菌だけでなく、常在菌まで殺菌するので、手荒れが起こる原因となる。
次亜塩素酸ナトリウムは浸透性が低いので、皮膚の表面のみに浸透する。モノを触ったときに付着する菌(表面通過菌)のみを殺菌するため、手荒れの心配がない。
タンパク質汚れのついたステンレス鋼では、
・水 一定の溶解力がある
・消毒用アルコール 溶解力は著しく減少
・次亜塩素酸ナトリウム 強い溶解力
消毒用アルコールでは、エタノールにより、ほとんどのタンパク質が除去されない。微生物の場合、死滅はするが、死骸は残留している状態だ。
次亜塩素酸ナトリウムは、タンパク質の優れた除去力を得ることができる。微生物の場合には、生菌・死菌も除去できる。
『布巾を用いた拭き掃除』『漬け置き洗浄』でも、水や消毒用アルコールに比べて、次亜塩素酸ナトリウムの洗浄効果は高い。
次亜塩素酸水との大きな違いは、ph値だ。次亜塩素酸水は酸性だが、次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性である。
次亜塩素酸水は、殺菌力はあるが、水以上の洗浄力がない。それに対して次亜塩素酸ナトリウムは、洗浄力と殺菌力がある。
加えて、次亜塩素酸ナトリウムは濃度の安定性があるため、容器で保存ができる。家庭での実用性が大きい。
■身近に使われ、洗浄力と殺菌力が高い
引き続き、市販の「次亜塩素酸ナトリウム」製品の違いについて解説した。
次亜塩素酸ナトリウムは、
・P’s GUARD(ピーズガード) 100、200ppm、スプレー吹き付け用
・ベビー用品殺菌剤 10,000ppm、漬け置き用
・塩素漂白剤 約50,000ppm、漬け置き用
・浴槽カビ取り剤 約50,000ppmフォーム洗浄用
ppmや成分の違いにより、用途が異なる。
次亜塩素酸ナトリウムの身近な利用用途としては、
・水道水の消毒
・プール水・温泉水の消毒
・食品の殺菌処理にも利用
・畜産・競馬界での多様な利用
これらがあげられる。
次亜塩素酸ナトリウムの原液は濃いので、使用時には適切な濃度に水で希釈する必要がある。
使用時はできるだけ一定時間接触させるため、漬け置き洗浄、フォーム洗浄、スプレー吹き付けをする。
注意点としては、次亜塩素酸ナトリウムは汚れを除去するのではなく、汚れの代わりに付着するため、水濯ぎ(水拭き)を十分に行う必要がある。
コロナウイルスの不活性化については、50ppm、pH9.8の次亜塩素酸ナトリウム水溶液の中に、豚コロナウイルスを混合させて、一定時間接触させた実験を示した。
0.9%の食塩水は、15秒経っても、ほとんど不活性化されていなかった。それに対して次亜塩素酸ナトリウムは、15秒後には99.9%異常は不活化される結果になった。
福崎教授
「コロナウイルスは粒子の中にRNAがあって、それを包むエンベローブという膜があります。さらに、それを貫通するようにSスパイクタンパク質が出ております。これら、いずれか一つの損傷で感染力は喪失されます。」
次亜塩素酸ナトリウム水溶液のイオンはSスパイクタンパク質を損傷させることで、まず吸着させない。さらにエンベローブを破壊して不活性化させることがわかっている。
弱酸性次亜塩素酸水溶液(25ppm、pH6.5)の中に、新型コロナウイルスを混合して接触させると、リン酸緩衛生理食塩水に比べて、1分後は99.99%以上減少していることがわかった。
またエンベローブがなく、薬剤耐性が高いとされるノロウイルスについても、次亜塩素酸ナトリウムは同ウイルスを不活性化する効果があった。
今回のセミナーを通して、次亜塩素酸ナトリウムは身近で洗浄力と殺菌力を持つ優れた除菌剤であることが理解できた。
なお、全薬工業の情報サイト「除菌ラボ」では、除菌を行う上で知っておきたい知識など、除菌にまつわる情報が提供されている。除菌について詳しく知りたい人は同サイトを確認してみよう。
出典: ITライフハック
この記事へのコメントはありません。