事業の概要
市内約100店舗の宿泊施設や飲食店等で利用できる「プレミアム付き電子旅行商品券(瀬戸内市プレミアムe街ギフト)」を、2020年10月から2021年2月末まで、総額1億円分を販売している。本商品券は、本市を訪問される観光客等がいつでもどこでも購入可能で、購入価格の25%分のプレミアムを付与して販売しており、利用者はスマートフォンで専用サイトにて購入したうえで、店頭にてスマートフォンに専用のスタンプを押すことで決済するシステムであり、キャッシュレス初心者にも比較的簡単に利用ができる。この仕組みは、2019年11月から「ふるさと納税」の返礼品として取り扱いを開始した地域商品券「e街ギフト」とも連携しており、地域通貨の域内消費及びキャッシュレスの推進にも繋がっている。
≫ 瀬戸内市プレミアムe街ギフト
事業の背景
市内観光関連事業者は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、観光客が激減したことで、経営的に大きなダメージを受けている。そうしたことから、誘客促進策の一環として、感染症対策としてのキャッシュレス対応を勘案したうえで、「Go To トラベルキャンペーン」との連動による効果や、同キャンペーンの支援が受けにくい日帰り旅行者向けの施策としても高い効果があると見込まれたことから、本事業を実施することとした。
首長インタビュー
注目事業を実施にすることにした背景や目的
瀬戸内市はふるさと納税の返礼品として、「瀬戸内市e街ギフト」という市内の加盟店で使える電子商品券を発行しておりました。これは瀬戸内市の関係人口増加を目的にし、どちらかというと市外の方を瀬戸内市に呼び込む施策の一環でした。しかし今回、コロナ禍においては、市外からの観光客需要は大幅に減り、観光事業者の方々が危機に瀕する事態となりました。この「瀬戸内市e街ギフト」のシステムを利用し、目的を市内の消費喚起へと拡大したのが「瀬戸内市プレミアムe街ギフト」です。ふるさと納税への寄附をした方に限定せず、だれでも25%のプレミアムのついた電子商品券が購入可能になりました。利用可能店舗の増加とともに、地域内消費の活性化とキャッシュレスの促進を図っています。
注目事業でこだわったポイントや期待している点
昨今、スマホ等を介した電子決済システムの認知度が高まっています。ただ、利用には専用アプリのダウンロードが必要ですし、お店も決済端末を用意しなければなりません。「e街ギフト」もスマホを使用して決済するという点では同じですが、専用アプリのダウンロードも、加盟店側の決済端末も必要ありません。お店に必要なのは、スマホの画面に直接タッチする静電気式のハンコのみです。ハンコで決済をカウントしますので、お店側が申請書を提出する手間もかかりません。こうした負担軽減によって、加盟店舗数は当初の目標値を上回るものとなっています。
また、このシステムは小規模事業者に導入しやすい一方で、画一的なレジシステムを求める全国チェーンの店舗には導入しづらく、よりピンポイントに市内事業者での消費促進につながっています。
“地方創生”について思うこと
地方の課題というのは、具体的にはやはり富の蓄積を考えていくことです。全国規模のチェーン店は、たしかに地域の雇用を生んで労働対価を払うかもしれませんが、基本的なモノやサービスの消費は中心部に集中していきます。この流れを食い止める必要性を強く感じています。
私は以前、イギリスのバーミンガム大学に留学していました。イギリスにはチェーン店というのはそれほど多くなく、地元のパブのようなローカルな小規模店というのが根強く生きています。「ロンドンはイギリスではない」という言い方もするほど、地域重視の意識を高く持っています。地域経済をしっかりさせるとともに、地域に暮らす人々にも、誇りや愛着を持って暮らしやすくするというのが、分散型社会のあるべき姿なのではないかと思います。
臨時交付金をどの事業に充てるか優先順位の考え方
当初は大規模な感染拡大というのは見られなかったのですが、やはり経済的な煽りを受けて、しわ寄せが行きやすいところに給付を考えていきました。子育て世代に向けて、国の方で児童手当を1万円増額しましたが、市の方でもさらに3万円を上乗せして給付しました。また、観光事業でいえば、宿泊事業者支援策として、 GoToトラベル等に先駆ける形で、宿泊者に半額補助を行うキャンペーンを行いました。タイミングが早かったこともあり、これは観光事業者の方々には非常に好評いただいた事業です。こうした一時的な支援と、「プレミアムe街ギフト」のような中長期的な経済循環施策を併せることで、市内全体を支えていくことを想定しています。
withコロナ時代の地域づくり
やはりデジタル化の促進というのは、今後はより一層問われてくるようになると思います。キャッシュレス促進にとどまらず、行政サービスのデジタル化も含め、あらゆる施策を打たなければなりません。導入にあたって障壁となるものが何か、利用者目線から考えていくことが重要だと思っています。
また、市民の皆さんの活動の促進も大きな課題です。生きがいに関わってくる文化芸術活動や健康づくり、ボランティアといった貨幣経済の枠組みでは捉えにくいものも、地域通貨を運用すれば経済循環に組み込むことができるかもしれません。
デジタル化時代の経済活動というものの姿を考えながら、暮らしやすく、愛着の湧くまちづくりができればと思います。
出典: 地方創生図鑑
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