2021年3月22日(月)より開催していた飾りたいと思う写真展『アートの競演 2021風花』はArt Gallery M84の第105回目の展示として実施した一般公募展だ。コロナ禍でもあり、感染防止対策を実施しながら開催したが、入場料を設定しているにも関わらず、多くの来場があり、4月3日に終了した。今回、写真を芸術として創作した約24点の作品を展示した中から3賞(M84賞、Customer賞、フレームマン賞)を決定した。
■考えることや気づくことが沢山ある
お客様が気に入った作品が見つかって、ご購入に至らなくても会場にて作品へのメッセージを投稿頂き、4月2日末時点の投稿数でCustomer賞を決定致しましたが、多くの方々から頂いた応援メッセージは、作家の宝物となった様です。
一般公募展は同ギャラリー開設1周年を記念して開催した写真展「人それぞれ」(2014年7年21日~)から始まり、名称を写真展「アートの競演」に変更した後は、年2回の開催を実施。1800年代末期の欧州で、写真はその記録性のみが注目されて、芸術作品としての認識や評価はなされておりませんでした。日本の現写真分野において芸術作品の位置付けがどの様になっているのだろうかと考えるきっかけになればと思って開催しております。作品が如何にアートであるかをオープニングにて語って頂きました。
作品をお部屋に飾りたい、又は収集して眺めたいと思う作品が見つかるかもしれないのが飾りたいと思う写真展『アートの競演 2021風花』です。部屋に飾りたいと思って作品を観るのと、単に作品を眺めるのでは違うのです。作品を飾ろうと決めたら、考えることや気づくことが沢山あります。
ご来場のお客様からは、作品の不思議さに驚いて、どうやって作ったのと質問が多いです。「写真でこんなにも幅広く表現できるものなんですね。初めて知りました。」と言う方など、お客様ご自身もやってみたいと思ってもらえているようです。
前回も感動したので、今回も見に来ましたと言う一般のお客様、今回はお友達を連れてのご来場でした。また、Webで検索したら面白そうなので、写真展を観るのが初めてと言うお客様も姉妹でご来場でした。
Art Gallery M84オーナー 橋本正則
● M84賞
【作品】Title : Karuizawa / 軽井沢
同じ画像を2枚、上質紙にインクジェトで出力して、それぞれに蝋を染み込ませてから少しずらして貼り合わせた。表面に残した蝋の跡や紙と紙の間に入り込んだ気泡が、 1点ごとに異なる表情を作る。額とパネルにアンティークな仕上げを施すことで写真作品と共通の時間を超えた世界を表現した額装も作者の自作による。
Shooting : 2010、Printed : 2021、Editon : 1/10、Signature : Yes、Image Size & Print Paper Size : 186 x 277㎜、 Media:Waxed Woodfree paper、Print Method : Digital Pigment Print、Frame size : 365 x 442㎜
1)どんな点がアート(一番最初、又は ありふれていない)なのか?
ジョン・ダンの詩「別離-窓ガラスの我が名に寄せて」を出発点に、決して特別ではない風景を日常から少し遊離した世界として写真に仕上げました。蝋を使うことで、窓ガラスごしに見ているような効果を出すとともに、物としての写真の存在感が強まったと思います。
2)飾りたいと思って貰える点?
モニター上で見るよりも実際に見た方がいいと思える写真、というものにこだわって制作しました。作品に合わせて額装も無機質にならないように工夫しました。飾った時に、部屋の雰囲気を変える力のある作品になったと思います。
【選評】
これは何だろうと引き込まれ、深い緑に電線かと思いきや、テニス審判台の影であった。夢の中で思い出を観ているような感覚になる不思議な空気感を持つ作品である。画像をずらして重ねプリントした後に、プリントの表面に手作業で蝋をかける試みは従来の写真とは異なる味わいを醸し出しており飾りたい作品である。しかも額装を漆喰の様に自ら工夫して制作し作品とマッチしており、物としての完成度が高い。
【作家】福岡 陽子(フクオカ・ヨウコ)氏
栃木県出身
青山学院大学文学部第二部 英米文学科卒業
2007年 東京写真学園レベルアップフォトレッスンコース終了
2010年4月より2014年3月まで写真家 松本路子氏のワークショップに参加
【受賞歴】
2010年05月 東京写真月間『写真の日 記念写真展2010』自由作品部門 入選
2013年09月『INTERNATIONAL PHOTOGRAPHY AWARDS 2013』
Non-professional still life部門 佳作受賞
2015年02月『御苗場vol.16横浜』エプソン賞受賞
2017年01月 飾りたいと思う写真展『アートの競演 2017睦月』フレームマン賞受賞
2018年10月『INTERNATIONAL PHOTOGRAPHY AWARDS 2018』
Non-professional architecture:Cityscapes / Urban部門 佳作受賞
2020年01月 飾りたいと思う写真展『アートの競演 2020明春』G.I.P.Tokyo賞受賞
【展示歴】
2010年01月 個展『世界パズル』 ギャラリー・ニエプス(東京・四谷)
2011年11月~2012年6月 個展『本の街から』本と街の案内所(東京・神田)
2015年04月 個展『本と物語、または時間の肖像』森岡書店(東京・日本橋)
2017年01月 写真展『アートの競演 2017睦月』Art Gallery M84(東京・銀座)
2019年03月 個展『Biblioscenery / ビブリオシナリー』Art Gallery M84(東京・銀座)
2020年01月 写真展『アートの競演 2020明春』Art Gallery M84(東京・銀座)
2020年08月 写真展『アートの競演 2020長月』Art Gallery M84(東京・銀座)
2021年02月 G.I.P.Selection 個展『見ているきみがぼくなのだ』space2*3 (東京・日本橋)
●Customer賞
【作品】Title : My colors, in between
視覚的な面白さを持った抽象的な写真によって情緒そのものを表現しようとしてます。
Photography year : 2020、Printed : 2021、Signature : Yes、Edition : Open、Image Size : 280 x 422㎜、Print Paper Size : 346 x 432㎜、Print Method : Gelatin Silver Digital Color Print、Mat・Frame Size:436 x 526㎜
1)どんな点がアート(一番最初、又は ありふれていない)なのか?
一見単なるスタイリッシュな静物写真かもしれないけれども、卵などのモチーフによって想像の世界が広がります。本シリーズのタイトル「My colors,in between(その間、私の色)」のように、黒と白だけでもなく、静物だけでもなく、その間にはまだ何かがあります。おそらく心の中に。
2)飾りたいと思って貰える点?
シンプルな構成と落ち着いている色調からなる本シリーズの作品はデザイン性があって、飾っているお部屋をおしゃれな雰囲気にすることができると思います。抽象的なモチーフを使った構成は見る人のそのときの心境によって、思い巡らせます。
【選評】
白黒バックにスプーンを配したシンプルな構成ではあるが、とてもシンボリックで卵の黄色がポイントで効いているアートな作品である。単なる静物写真とは異なりデザイン的であり、お部屋に合わせ縦位置だけなく横位置にしても成り立つ飾りたくなるモダンな作品になっている。
【作家】ユアン(Yuan)氏
台湾出身
猫の魅力に惹かれたことが撮影のきっかけになった数学者。
猫やファインアート撮影など幅広く活躍中。
【受賞歴】
2018年05月 モスクワ国際写真賞「MIFA ペット部門」佳作受賞
2019年01月 飾りたいと思う写真展「アートの競演 2019寒月」M84賞受賞
2019年05月 モスクワ国際写真賞「MIFA ペット部門」佳作受賞
2019年11月 ロンドン芸術写真賞「FAPA 抽象部門」入選
2019年11月 アメリカ国際写真賞「IPA 芸術抽象部門」佳作受賞
2020年09月 パリ写真賞「PX3 ストリートフォト部門」佳作受賞
2020年11月 アメリカ国際写真賞「IPA 芸術静物部門」1位受賞
2020年12月 ブタぺスト国際写真賞「BIFA 芸術抽象部門 佳作受賞
【展示歴】
2019年01月 写真展「アートの競演 2019寒月」Art Gallery M84(東京・銀座)
2019年07月 写真展「アートの競演 2019涼月」Art Gallery M84(東京・銀座)
2019年10月「80人のアマチュア写真家による平成最後の日、令和最初の日」
快晴堂フォトサロンギャラリー(東京・丸の内)
2020年07月 ニコンカレッジグループ展「船の上から飛行機&工場夜景スナップ」
富士フォトギャラリー(東京・銀座)
●フレームマン賞
【作品】Title : SO
描いているのは、感光材やインク、光など写真の素。これまで撮った写真のカケラを解体して再構築。モノの存在感と思考的な奥行きを作品に込めている。
Printed : 2021、Editon : unique、Signature : ok、Print Paper Size : 297 x 420㎜、Media:wooden panel / clay / washi / beeswax、Print Method : Digital Pigment ink、Frame size : 503 x 622㎜
1)どんな点がアート(一番最初、又は ありふれていない)なのか?
まずアートの文脈から現代を問う。これからの写真とは何かを自分なりに問いかけています。次に作品を生み出す切実な理由は何か? 葛藤の先にアートは宿ると考えますが、僕なりの動機を宿しています。最後は作家として活動を続けられるのか?過去の作家と対話するように未来と対話がしたい。だからモノをつくり続けるつもりです。
2)飾りたいと思って貰える点?
出会ったときの感覚、衝動をずっと残したておきたいと思えるコト。感性、琴線に触れるといったパーソナルなトリガーが弾かれる体験。例えば、想像力を喚起させられたとか斬新さに衝撃を受けたとか。情熱に心揺さぶられた。素敵な思い出が蘇るなど、出会った人にポジティブな衝動を与える作品に飾ってもらえる価値があると信じています。
【選評】
打ち出しが強く、作家の人生が盤面に詰まった何か不思議な力を感じる抽象絵画のような作品ですね。額装も凝っていて、額装も含めて作品になっていますので、額の周りを見渡してしまいます。フレーム枠の幅をもう少し細くすると作品にすっと入れるように思います。
【作家】山田谷 直行(ヤマダヤ・チョッコー)氏
1972年 北海道札幌市出身
雑誌編集者を経て、 2010年からカメラマン、並行して作品製作を開始。日本各地を取材で訪れた経験から名もなき道を描いた『轍の記憶』。自然に漂う空気感を題材にした『其此は彼と無い』を発表。『轍の記憶』は、写真作品で唯一タガワアートビエンナーレに入選。『其此は彼と無い』は、fotofeverに出展され。パリのギャラリストやコレクターの間で評判となり複数コレクションされる。アナログ技法とデジタルを融合し、画材などを用いたクラフトワークを経て、ボーダーレスな1点物の作品作りをしている。
【受賞歴】
2020年12月 第2回タガワアートビエンナーレ「英展」公募展入選
【展示歴】
2019年04月 個展『轍の記憶』アウラ舎(東京・押上)
2019年11月 アートフェア『fotofever 2019』(フランス・パリ)
2020年03月 個展『一枚の写真』アウラ舎(東京・押上)
2020年08月 個展『写真画展/其処は彼と無い』アウラ舎(東京・押上)
2020年12月 第2回タガワアートビエンナーレ『英展』田川市美術館 (福岡・田川)
出典: ITライフハック
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